注目店クローズアップ

【編集長の新店チェック】東京・銀座にフランス料理店『銀座 大石』がオープン

「シェフトモ」編集長が注目の新店をチェック。

新たに開業を志す方々にも参考となるアイデアが詰まったこの企画。
記念すべき第1回目は、ハイエンドなレストランとしては、今秋、もっとも注目されるニューオープンの一つ。
銀座に開店したフランス料理店『銀座 大石』です。

店の成り立ち:『銀座 大石』とは

オーナーシェフは、東京屈指の正統派フレンチ『北島亭』で16年間、スーシェフを務めた大石義一シェフ

巨匠の下についたスーシェフではありましたが、愛嬌のあるキャラもあって、業界内では知らない人はいないほどの知名度を誇っていました。

このオープンに当たっても、歩道にまであふれた、お祝いの花、花、花!

これを贈ったシェフ名や店名をみているだけで、そんじょそこらのメディアのおすすめ店リストよりもすごいんじゃない?って感じる錚々たる顔ぶれ。

期待のニューオープンだということが、実感できます。

新店のコンセプト:カウンターフレンチ

名店で修行を積んだ料理人の独立というと、気になるのは、本店とどう違うのか?ということでしょう。

この『銀座 大石』の場合、わかりやすい違いは、店の佇まい。

『北島亭』が良い意味で昔ながらのクローズドキッチンの店だとするなら、こちらはカウンターキッチンのみ、全12席というつくり。

大石シェフのコミュ力は、『北島亭』のころから知られるところ。

この日も、常連さん相手に「『北島亭』のときは、フロアでお客さんと話し倒しているところしか見られていないので、こいつ、ほんとは料理できないんじゃないかなんて思ってませんでした?」と自らネタにしているくらい。

そんなキャラクターを前面に押し出しながら、同時に調理も目の前で見せていくというのが、独立にあたっての新機軸となるのでしょう。

シェフ本人だけでなく、キッチンスタッフの方から手渡しで受け取る演出などが、お客さんとの距離を縮めます。

リハーサルしてるんじゃないか?とも思える掛け合いや無茶振りなど、楽しいレストランでした。

 

価格設定:ディナーのおまかせコース 24,500円(税抜)

有名店出身で高い技術を培っても、独立に際しては、カジュアルな店から試していくシェフも多い中、強気な料金設定です。

しかも、おまかせコース1本のみで、これ以外にメニューはありません。

それだけの料金をつける場合、まずはお客様に対して、どう納得感を出すかということが重要になってきますが、第一に高級食材を取りそろえることでクリアしています。

9月上旬のメニューに使われた主食材をざっと挙げると、ウニ、すっぽん/トリュフ、フォアグラ、ポルチーニ茸、天然うなぎ、仔羊、飛騨牛の飛び牛、アワビ……と、客のほうが「原価、大丈夫かな?」と心配してしまうほどの充実ぶり。

とはいえ、『北島亭』のディナーコースが10,000~15,000円なので、本家より値を上げるのは、相当な勇気がいると思います。

そのためにどんな準備をしていたかを探ってみました。

オープンにあたって習得したスキル:和食での炭火焼き

前の店を離れ、現在の店を改装している2ヶ月の準備期間に、和食店でカウンターに立っていたという大石シェフ。

そこで身につけたかったのは、一つはカウンターでの調理の所作だと言います。

どれだけレベルの高い厳しい店で経験を積んでいたとしても、やはり見えない厨房での調理と、人前での調理は、まったく違うもののようです。

そして、もう一つは、炭火の技

厨房に立つことが決まっていた調理スタッフとともに、この習得にはとくに力を入れたとのこと。

その成果は、「うなぎの白焼 キャビアソース」「飛騨牛ランプ飛び牛のグリル」などに表れています。

彼としては、これまでにない料理のボキャブラリーを使いながら、新たな美味しさを追求した逸品の誕生でしょう。

課題:引き継いだものを守りながら変えていくということ

ここまでは、有名店出身の料理人だからこそのメリットを並べてきたように映るかもしれませんが、かえってリスクもあります。

一言でいえば、それは本家との距離感です。

美味しくても同じことをやれば、結局は師匠の枠を出ていないと言われ、違うことをやって美味しくなければ、二世議員のように結局は看板だけと言われます。

そんな板挟みの状況で、培ってきた料理を「守りながら変える」という離れ業を成し遂げなければ、本家の常連などを納得させられないのです。

例えば、『北島亭』のスペシャリテの一つである「ウニのコンソメゼリー寄せ」

このメニューも『銀座 大石』のメニューに組み込まれていましたが、カリフラワーのソースをムースにしたり、ポーションの大きさを調整したりとニュアンスを変えています。

もう一つの『北島亭』のスペシャリテである「仔羊の岩塩包み焼き」

こちらも、塩加減をギリギリのところに抑えるなど、ニュアンスは変えていました。心持ちエレガントになったような印象です。

「『北島亭』ではいろいろ任せてもらったけれども、塩は親父(北島シェフ)の仕事だった」とはシェフの弁。

『北島亭』という一つの店のスペシャリテではありますが、フランス料理を志す料理人にとって、それは東京のフランス料理遺産のような料理でもあるでしょう。

貴重な食文化であれば、技術の伝承はそれ自体で価値がありますし、個性偏重の現在の中では、逆にそっちのほうが相対的には個性的になることだってあります。

そう考えると、「伝統を守るために、(変えていくべきことは)変える」とはよく言われますが、それに近い継承が師匠から弟子へと行われていることは、非常に好感が持てることでした。

まとめ

以上、2019年9月2日にオープンした東京・銀座のフレンチレストラン『銀座 大石』のご紹介でした。

名店で修行した料理人の注目されるデビューではありますが、名前だけを看板にするのではなく、一つひとつディテールを詰めていくところには、多くの店にとっても参考となるヒントが隠されているように思います。

ぜひ実際に訪れてみてください。

 

『銀座 大石』店舗情報

営業時間:ディナー 18:00〜23:00 定休日:月曜日
電話番号:03-6278-8183
住所:東京都中央区銀座2丁目10−11 銀座マロニエ通り 銀座館2F

店の地図