オペレーション

【人気レストランのプレイリスト】Vol.2:東京・白金台『ライク(Like)』原太一シェフ

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レストランで流れている「音楽」にはどんな役割があるのでしょうか。
そして、音楽やカルチャー的なバックボーンが、料理の創作に影響を与えることはあるのでしょうか。
そんな素朴な疑問を追求してみようと、

①ある日のプレイリスト
②シェフが選んだアルバムベスト3
③シェフの音楽的なルーツと料理の関係を紐解くロングインタビュー

という3方向から、音楽と料理、レストランとカルチャーというテーマを深堀ってみたいと思います。

第二回に登場するのは、東京・白金台の『Like(ライク)』の原太一シェフ。
既存の枠に捕われない料理と食空間の創造に定評のある原シェフに音楽への思いを語っていただきました。

多国籍料理・カクテル・音楽がコンセプトの『Like』

渋谷『Rojiura』、代々木八幡『PATH』を手がけた原シェフがオープンした白金台『LIKE』。斬新な多国籍料理・カクテル、これまで以上に音楽をフィーチャーしたお店です。

「ここにレストランが?」と思わず疑ってしまう、森の中に迷い込んだような建物の3階。店内に入るとすぐステージ、続いて厨房があり、奥にはバーカウンター。落とした照明が広々とした空間を包む大人の隠れ家です。

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料理は、フレンチをベースにした多国籍料理。「蝦夷鹿のパテドカンパーニュ」はフレンチのシェフならではの一品です。重量感がありつつあっさり食べられます。

tokyo-restaurant-like-foodハーブを大胆にあしらった「水ナスと梅のサラダ」。すべての素材が「生きて」いてみずみずしく、梅の酸味は軽く一杯飲みたいときにも最適です。

上質なレストランの格式を感じさせつつ、肩肘張った感じがないのもLIKEの魅力。11:30から23:00までの通し営業で、ディナーのみならずランチ・カフェとしての利用もできます。

tokyo-restaurant-like-food「蒸した金目鯛と中華粥」「白キムチ」のようにアジア料理の要素を取り入れたメニューも豊富です。

これまでのフレンチとは違った料理を自分なりにやってみたかったという原シェフ。アラカルトはデザートに至るまで30種類以上あり、予想外の素材の組合せやスパイスの刺激がもたらす驚きが満載です。

tokyo-restaurant-like-cocktails恵比寿のバー『TRENCH』が監修したオリジナルカクテルは全6種類。料理とのペアリングを考えた、見た目も味も個性的なカクテルが並んでいます。

「アラックラッシー」(写真左上)は、ヤシの実や米を原料とするバリ島の蒸留酒アラックを使ったラッシー。ヨーグルトのまろやかさが、スパイスの効いた料理を際立たせます。
「カフィアライムミュール」(写真右上)コブミカンの葉やジンジャーの爽やかな香りで軽やかな飲み口。

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無国籍料理に加え、カクテルも原シェフのやって見たかったことのひとつだったそう。店内奥にあるバーカウンターはさらりと一杯飲みたいというお客様にも対応しています。

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プロ顔負けの機材が並ぶステージ。『Rojiura』『PATH』ではスペースの問題などで実現できなかったことを、『LIKE』で爆発させました。機材は音響に詳しい友人などから情報収集し、思い切って揃えたそう。ライブイベントのない普段は、ヴィンテージカスタムのスピーカー(JBL)から原シェフ自慢のレコードが流れています。

ケンリックサウンドによる機材設置の映像がこちらで観ることができますので、店作りの参考にしたい方はどうぞ!

 

料理にカクテル、空間作り、そして音楽まで大人が本気で遊んだらこんなに楽しい!というエネルギーが伝わってくる『LIKE』。店を率いる原太一シェフの音楽的なバックボーンはいかに?

ぜひ、最後までお楽しみください。

ある日の『Like』のプレイリスト

アナログレコードが特徴の『Like』ですので、基本的にはアルバム毎に音楽がかけられますが、最近よくかけている楽曲を、特別にプレイリストにしてもらいました。

実際にお店にいる気分で、楽しんでください!

 

『Like』原シェフが選ぶアルバムBest3

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今も原宿の「BIG LOVE RECORDS」に週一で通うという原シェフ。現役でクラブのレジデントDJも務めています。音楽への愛着は薄れることなく、年々好きなアーティストは増えていく一方だそう。レコード好きは学生の頃からで、「学生の頃はお金がなかったから、今が人生で一番レコードを買っているかも」と嬉しそうに語っていました。

ステージ脇の棚に所狭しと並ぶアナログレコードたちは、お店にあるだけでも200枚超え。さて、原シェフは、それらの中からMy Best 3としてどんなアルバムを選んだのでしょうか?

the Orb『Once More』

原シェフ・コメント
初めてアレックス・パターソンのDJを見たときは、衝撃的でした。クラブミュージックもロックもごちゃまぜでかけていて、かっこよかった。80年代からアンビエントをやっていて、のちのミュージシャンへ与えた影響も大きい。これはシングルですが、ダニー・テナグリアのリミックスも入っている名盤です。
項目名 ジ・オーブ(the Orb)
項目名 『ワンス・モア』
項目名 アレックス・パターソンを中心としたプロジェクト「ジ・オーブ」。移り変わりの激しいエレクトロニック・ミュージック・シーンにおいて、常に時代の最先端で革新的な作品を送り出し続けてきた彼らの、DJ向けミックスが収録された12インチシングル。プログレッシブなDANNY TENAGLIAのリミックス収録の人気盤。
項目名 2001年発売
レーベル: ISLAND

 

KHRUANGBIN『The Universe Smiles Upon You』

原シェフ・コメント
初めて聴いたときは、「この手があったか!」と思いました。キャッチーでポップで、音楽を知らない人も気持ち良く聴けるのにおしゃれ感もしっかりある。これだけいろんな音楽が出尽くした世界で、まだこんな音楽が作れるんだ!と感動しましたね。去年の渋谷クラブクアトロでのライブは、どうにか追加公演のチケットを取って見に行きました。
アーティスト クルアンビン
アルバム名 『ジ・ユニバース・スマイルズ・アポン・ユー』
解説 ボノボに見出されたテキサスの3人組「クルアンビン」のデビューアルバムのレコード。テキサスを拠点に活動を続けながら、60〜70年代のタイ音楽や東南アジアのポップ・ミュージックに影響を受けたエキゾチックでノスタルジックな柔らかさと、オーガニックで温かいグルーヴは一度聴いたら病みつき必至。
データ 2015年発売
レーベル: BEAT RECORDS
https://www.beatink.com/artists/detail.php?artist_id=1138

 

black midi『SCHLAGENHEIM』

原シェフ・コメント

今年1位のレコード!まだ十代の男の子たちで、まさに「初期衝動」って感じなんだけど、ライブの演出はアーティスティックでクール。これだけパンクバンドが出尽くした中で「ブラック・ミディっぽいアーティスト」って言われると出てこないんです。最近、音楽の世界も料理の世界も若い子の勢いとセンスがすごいです。

アーティスト ブラック・ミディ
アルバム名 『シュラーゲンハイム』
解説 ロンドンを拠点に活動するバンド「ブラック・ミディ」のデビュー作。ポストパンク、サイケ、ノイズ、プログレ、インディー、ブルースとジャンルの垣根を問わず縦横無尽に繰り広げられる。常に変化するセットリストや圧倒的な演奏技術、オリジナリティー溢れる楽曲。メディア露出も殆どなく謎に包まれるなか、ロンドンでは噂が噂を呼び一連のライブが即完売した。
データ 2019年発売
レーベル: Rough Trade

自分が楽しい、好きと思える音楽を常に発掘している原シェフの音楽的ルーツはどのようなものなのでしょうか?
続くロングインタビューで解き明かしてみたいと思います!

原太一シェフの音楽的ルーツを紐解くロングインタビュー

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学生時代の音楽遍歴 −シド・ヴィシャスからランシドを経て、クラブミュージックへ

●音楽について意識し始めたきっかけは何でしたか?

「中学生のときに『ザ・グレイト・ロックンロール・スウィンドル』っていう映画を見たことですね。映画の中でシド・ヴィシャスが『マイ・ウェイ』を歌っていて、かっこいい!ってパンクにハマりました。そこから70年代のパンクの時代背景を掘ったりしていく中でで、高校生くらいでリアルタイムの音楽にも興味が出始めて、初めて行ったライブは、ランシドでしたね。ジャケットがかっこよくて、高校の文化祭でバンド演奏するときも、テイストを真似てフライヤー作ったり」

●そして、だんだん深みにハマっていく感じですか?

「大学になると、クラブミュージックやエレクトロニカ、アンビエントなんかを聴くようになりました。ヒッピーカルチャー系が好きで、二十歳過ぎからはジャズとかも聴くようになって。そこからは広く浅くいろんなジャンルを聴いています」

●その頃はまだ料理人になろうとは思っていなったのでしょうか?

「音楽と同時並行でアート、デザインも興味があったので、大学生の時はグラフィック関係の仕事もいいなと思っていました。基本的には何でも作るのが好きなんですよね。レストランで働き出したのは、大学を出てからです」

「自分のこれまでのルーツの中からやりたいことをやったらこうなった、というのが『Rojiura』でした」

●『ミッシェル・トロワグロ』を経て最初に立ち上げたのが渋谷の『Rojiura』ですね。カフェみたいなカジュアルな佇まいなのに料理はハイエンドと、当時はとても珍しいコンセプトでしたよね。

「『こういうお店がないからやろう!』じゃなくて、自分のこれまでのルーツの中からやりたいことをやったらこうなった、というのが『Rojiura』でした。誰かと一緒のやり方じゃなくてもいいという根拠のない自信はありましたが(笑)、狙ってやったわけではないんです」

●『Rojiura』で流す音楽はどんなものを選んでいましたか?

「オープンした頃はちょうど昔の曲を流すブームが来ていて。ロックやブルースが好きだったので、90年代以降のものは流さない縛りを自分で作っていました。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ニール・ヤング、ダニー・ハサウェイ、ニーナ・シモンとか。自分の店を持ったら自分の好きなレコードをたくさん買ってかけるというイメージはあったので、やはりそこは外せませんでした」

 

「でも、『Rojiura』はいかんせん狭くて。席数を取るかレコードを取るかで、席数を取ったのであまり大々的にレコードをおくことはできませんでした。その思いは、2店舗目の『PATH』に引き継がれていきます」

●『PATH』を代々木八幡という、音楽好きやミュージシャンが集う街に出店したことには意味があるのでしょうか?

「最初は恵比寿と代々木八幡の両方で探していました。恵比寿は家賃が高すぎたこともあり、最終的に代々木八幡になりましたが、いいエリアを選んだと思っています。あのあたりは音楽好きが多くて、僕が好きで通っているリトルナップコーヒースタンドにもアーティストさんがよくいます」

●『PATH』で流す音楽はどんなものを選んでいましたか?

「いわゆるカフェで流れてそうなボサノヴァとかではなく、バンドものを流しています。インディーバンドがかかっていたり、ガールズバンドのうるさいのがかかっていたり、そういうテンションのイメージですね。ミュージシャンの来店が多いので、時々『私の曲も流して』なんてレコードを置いていってくれる方もいます」

『Like』でやりたかったこと

●そしてついに、『LIKE』に行き着きます。

「音楽に関してはここでやりきろう!という気持ちはありました。『LIKE』では、音楽と料理の比重は同じくらいなんです。これまでできなかった音楽に加えて、多国籍料理もやってみたかったし、カクテルもやってみたかった」

●この、ステージとフロアがあってちょっと離れたところにバーカウンターがある感じ、まさにライブハウスですよね!ここは居抜きですか?

「そうですね、基本は居抜きで、壁をぶち抜いたり、カウンター作ったりステージ作ったり家具を変えたりと手を加えました」

●『LIKE』で流す音楽のコンセプトはあるのでしょうか?

「ジャンルとしては『PATH』と似ていますね。でも、こういうスピーカー(JBLのヴィンテージカスタム)を入れているのもあって、音響の良いとより良く聴こえるアンビエント系のレコードは『LIKE』に、キャッチーなのは『PATH』に。そんなゆるい振り分けはありますね」

●そして待望の!生演奏ができるようになったんですね。これまでに演奏したアーティストのラインナップ、なかなか壮絶ですよね。

「ライブは2ヶ月に一回くらいのペースです。ニック・ハキムというブルックリンのアーティストと、オニキス・コレクティブというジャズバンドのイベントが最初。あとはチボ・マットの羽鳥美保さんのソロライブ。ロンドンのエイリアンタンゴのライブもやりました」

今後予定されているライブはありますか?

「TempalayのAAAMYYYさんと、オカモトズのボーカル・オカモトショウさんのライブを11月10日に予定しています」

「音楽も料理も、普通っぽいものに一捻りしたり、普通っぽいのになんか違うっていうのが好きなんです」

●音楽と料理が影響しあうことはあるのでしょうか?

「直接的に『この曲を聴いたからこの料理ができました』みたいなことはないですね。あ、でも、一度ボン・イヴェールを知らない友達とボン・イヴェールのライブに行ったときに、友達がすごく感動していたんですね。一時間くらいのライブの中でしっかり緩急があって、半端なくかっこ良くて誰も飽きさせない演出だったんです。バンド編成なのに急にソロで歌ったり。その時に『誰が見ても一定以上の感動を味わえる』ってすごいなと思いました」

●確かに。知らない曲ばかりで一時間楽しめるってすごいことですね。

「例えばコース料理を出す時にも同じようなことがあるのかな?と思いました。ちょうどその頃、難しいことを考えすぎてて。全部が全部斬新で期待を裏切るような料理にしようとか、誰もやっていないことをしようと思ったりしていたんですが、やっぱりベーシックで美味しいものを前提にして作ることが大事なんだなと気付かされました」

●アルバムBest3についてお聞きしたときも、原さんは「一見普通の中にある一捻り」が好きだと言ってましたね。ベーシックで美味しいのが大前提で、そこに一捻りあるのが大事、というのは原さんの料理全般に通じるものがありますね。

「そうですね。クルアンビンの音楽を知らない人も気持ち良く聴ける感じや、ブラック・ミディの『ありそうでない』感じ。僕の料理でいうと、『Rojiura』のクミンが効いたフライドポテトなんかがまさにそれですね。普通っぽいものに一捻りしたり、普通っぽいのになんか違うっていうのが好きなんです」

『LIKE』店舗情報

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営業時間:11:30~23:00 定休日:月曜日(第2・4日曜)
電話番号:03-5843-0140
住所:東京都港区白金台4-6-44 Jビル 3F
web:http://likelike.jp/

 

インタビュー=杉浦裕
テキスト=山本蓮理

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