注目店クローズアップ

【飲食店づくりのアイデア帖】東京麻布十番の焼鳥店『鳥はん』の場合

鳥はん「限定・比内地鶏皮付きもも肉のきじ焼き丼」

飲食店の店づくりをクローズアップする当企画。

注目店が現在に至るまでに経験した道のり――ターニングポイントとなった出来事お店のコンセプトの変遷などに焦点を当てていきます。

新たに開業を志す方々にも参考となるアイデアが詰まったこの企画。

今回紐解くお店は、創業54周年を記念して、現在Makuakeでクラウドファンディングのプロジェクトも展開している東京・麻布十番の焼き鳥店『鳥はん』です。

▽クラウドファンディングのページはこちらか、下記画像をクリックしてください▽

 

お店の成り立ち

『鳥はん』の創業は1965年までさかのぼります。

仙台駅前で先代がオープン。立地の良さも合わせ、駅前の焼き鳥と言ったら「鳥はん」と誰もが想起するくらいの有名店でした。

その伝説の店が、今なぜ東京・麻布十番で、食通たちから篤い信頼を得るお店になったのか。

転機となる出来事を中心に振り返ってみます。

ターニングポイント①:後継者として義父を継ぐ

現在の2代目店主・柳川好文さんが、料理人の道に入ったのが30歳の節目。

勤めていた一部上場企業を退社し、義理の父が経営する『鳥はん』に入店します。

「10年間、一職人として修行を積みました」と振り返るように、店主になったのは40歳のときです。

『鳥はん』2代目店主の柳川好文さん

「会社という組織内ではなく、自分の技術や努力がダイレクトに反映される職に身をおいてみたかった」というのが、料理人に転向したきっかけだったそうですが、柳川さんのこの決意がなければ、『鳥はん』も一代で終わってしまうお店だったかもしれません。

ターニングポイント②:東日本大震災

「東北に住んでいた人間は、誰もがあの震災で、多かれ少なかれ人生が変わったと思います」。

そう語るように、大きな影響がありましたが、現実的にお店を続けるために立ちはだかった困難は、食材が入手できなかったことでした。

震災を期に、営業を中断している養鶏場も多くあり、流通が機能不全を起こしていたのです。

柳川さんは、手をこまねいて待っていても仕方ないと、自らの足で、活動を続けている生産者はいないかを探し、訪ね歩きます

「鳥はん」地鶏食材

現在の『鳥はん』では、秋田「比内地鶏」・山形「庄内彩鶏」・岩手「奥州いわいどり」という東北地方の3種の銘柄鶏を使用していますが、これらのプレミアム食材を安定して入手できる要因の一つは、その時の経験があったからだと言います。

苦楽をともにした強い絆――それが現在でも生きているのです。

「鳥はん」プリン

例えば、人気のデザート「呼朝卵のプリン」

濃厚な味が特徴で、なおかつコレステロール値がほぼゼロということが大人気で、「商品化してほしい」という声も聞かれる絶品です。

これは、庄内彩鶏が自然に産み落とす卵を使っているのですが、1日数百個しか採れない食材でもあります。

こんな希少食材を使った逸品をさらりと出せるのも、これまでの積み重ねがあるからこそでしょう。

ターニングポイント③:東京移転

2代目店主が東京出身であったこともあり、東京移転を決心、2018年夏に実行。

知人の不動産業者のすすめもあり、東京のなかでも麻布十番を選びます。

「自分たちも歳を重ねてきましたので、麻布十番の落ち着いた雰囲気が非常にしっくり来ました」

麻布十番『鳥はん』外観

とはいえ、麻布十番は、飲食業にとって激戦区

店を出したからといって、成功するとは限りません。

『鳥はん』は、どういったコンセプトや戦略で、この新たな試みに挑戦してきたかを振り返ってみます。

コンセプトの変遷

戦略①:メニューの一新。コース料理のみに

庶民的な焼き鳥店だった『鳥はん』が、麻布十番に移転して、まず行ったのは、メニュー構成の一新でした。

「鳥はん」コース前半

「麻布十番という土地柄の影響もありますが、コースであることにこだわりました。つまり、飲み屋の一種としての焼き鳥屋ではなく、ちゃんと料理として食べられる焼き鳥にシフトチェンジしたということです」(柳川さん)

確かに、人気の焼き鳥店が林立する麻布十番で、もう入り込む隙間なんてないかのようにも思いますが、このポジションは意外や空いていたと言えるかもしれません。

「鳥はん」コース後半

戦略②:ボックス席メインという独特な店内設計

店づくりとして、『鳥はん』が個性的なのは、ボックス席を中心とした、独特な座席設計にもあります。

麻布十番「鳥はん」店内

焼き鳥店と言えば、やはりカウンターのイメージが強いでしょう。

あるいは、最近人気が出てきた店では、シックな個室を完備している店も増えています。

『鳥はん』はそのどちらかを選ぶのではなく、むしろ間を取った座席設計を選んでいるわけです。

実際に体験してみればわかりますが、これが妙に心地よいのです。

個室のような圧迫感はなく、カウンターのようなガヤガヤ感もない。

開放感とプライバシーの程よいバランス感が、この店の「単に飲み屋ではない焼き鳥店」というコンセプトを体現しているでしょう。

「鳥はん」テーブル席

強み①:夫婦経営であること

繰り返しになりますが、麻布十番は、気の焼き鳥店が林立している激戦区です。

そのなかで、『鳥はん』が特徴的なことをさらに挙げるなら、夫婦経営であることも付け加えられます。

麻布十番『鳥はん』店主

現在では、かえって珍しくなっているかもしれませんが、このスタイルの強みは、サービスなどがブレないこと。

一世を風靡する人気店でも、スタッフの入れ替わりによって、微妙な味の違いやサービスのニュアンスの違いが出てきます。

敏感なお客様だと、まったく違う店に変わってしまったように感じてしまうでしょうが、スタッフが変わりようのない夫婦経営では、そんなリスクとは無縁です。

「鳥はん」

強み②:老舗の技と味という財産の活用

老舗であることの財産を使えるのが『鳥はん』の強みでもあります。

例えば、焼きの技術習得であれば、センスのいい職人が名店で修行すれば身につけることはできるでしょう。

けれども、つぎ足した秘伝のタレやスパイスなどは、真似しようにもできないことです。

「鳥はん」レバー

先代が築き上げ、創業当時から継ぎ足された50余年の味。

くっきりした味なのですが、とげとげしさはなく、強いて言うなら、コクとまろやかが共存した味という感じでしょうか。

「鳥はん」手羽

このあたりは、やはり老舗の強みでしょう。

新進の店でもインパクトは出せますが、この深みはなかなか出せないはずです。

まとめ

東京・麻布十番『鳥はん』をフィーチャーして、飲食店の店づくりのアイデアを振り返ってみましたが、いかがでしたでしょうか?

戦略など参考になる部分、逆に誰でも真似できるわけではない既に持っていた強みなどありますが、伝統や技術などの資産だけに頼るのではなく、それらをどう現在の環境に合わせていくかを、しっかりと考えているお店でした。

現在、クラウドファンディングを実施中で、通常よりお得に楽しめるリターンチケットも出しているようなので、ぜひ実際に体験してみてください。

(リンク先はこちらか画像をクリックしてください)

『鳥はん 麻布十番店(とりはん)』店舗情報

営業時間:ディナー 18:00~23:00 (L.O.22:30) 定休日:月曜・不定休
電話番号:03-6271-9995
住所:東京都港区麻布十番2丁目8−7

店の地図